御苗場2013の感想です。

御苗場2013

 

 http://www.onaeba.com/about.html

 

 御苗場という写真のイベントに参加して4回目になる。今年は1月31日〜2月3日の横浜での御苗場に参加した。

 アマチュアとかプロとか関係なく、誰でも参加可能な写真のアンデパンダン展といったところ。サイズもテーマも表現方法も自由。それぞれが工夫を凝らしてわずかなスペースに作品を展示する。

 毎年、参加者は増え、申し込みは早い者勝ちなので、あっという間に100以上あるブースは埋まってしまったそうだ。4年前に初めて出展したころは鉄道や鳥、風景を撮るハイアマチュアな方々とか料理写真を撮るグループとかが多かった。年々、表現のレベルも上がっていて、写真を単純に趣味としてでなく、アートとして捉えている人が増えていることがわかる。

 横浜での御苗場は毎年CP+というカメラやプリンターなどイメージング技術の各メーカーの発表会の一角で行われている。

 日本においては写真は「撮るもの」であって、「買うもの」「コレクションするもの」という認識はあまりない。CP+の一角に御苗場があるというのも、そのことを象徴している。多くの人はカメラを見に来て、御苗場にも立ち寄る。皆、「撮る」ことが楽しいのである。

 大学で教えていただいているある先生は、「買う」「コレクションする」という文化がないから、日本では写真表現が発展しないのだと嘆く。確かにそれは否めない。御苗場に写真を「買うもの」として見に来ている人はごく少数だろう。しかし、表現のレベルは年々上がっている。それはこのイベントを運営するCMSの人々の意識がアートとしての写真文化の向上を目指しているからだ。

 御苗場では6人のレビュアーがそれぞれ1名のレビュアー賞を選ぶ。6名のレビュアー賞受賞者はそれから半年間、「夢の先プロジェクト」に参加が出来、毎月ワークショップを受けることができる。その6名の中から写真集を作る権利を与えられる人が選ばれる。

 単に写真集なら、今時、インターネットでフォトブックを作ることが出来る。しかし、CMSが目指すのは、ニューヨークに持っていっても通用するアートとしての写真集だ。昨年の横浜御苗場で選ばれた山下さんの作品が素敵な写真集になって、今年の御苗場には展示されていた。

 御苗場が単に趣味の集まり、同好会の発表会的な展示の場に終わらないのは、その意識の高さにある。そこに誰でも参加出来ることにも価値がある。カメラもフィルムも高価なものであり、写真を撮るのは技術が必要だったころは、「カメラが趣味です」というのは富や知性のステータスシンボルだった。しかし、デジタルカメラの登場で、誰でも容易に写真は撮れるようになり、フィルムカメラほどお金もかからない。カメラ女子と呼ばれる子達も多く、スマートフォンでいい作品を撮ることも出来る。今回のレビュアー賞にはiphoneで撮った作品の人もあり、私は一眼カメラで撮った作品とともにiphoneの作品も展示した。

 デジタル化したことで、多くの人が写真表現に親しむようになり、層は厚くなっている。従来の写真の枠にはまらない自由な表現も増えている。かつては写真の展示といえば、「どこのカメラで撮ったの?」「露出は?」「シャッタースピードは?」「レンズは?」という会話が多く聞かれたものだ。しかし、御苗場において、そんな会話はほとんど聞かれない。ちゃんと表現として写真を見る人が増えている。カメラ自慢をしたくて写真を展示しているわけではないのだ。

 カメラにこだわらずに写真表現を楽しむということが、カメラやイメージングの産業においては、いいことなのかどうかはわからない。日本のカメラやイメージングの産業を支えて来たのは、多くのアマチュアカメラマンの人々であり、彼らは競うようにいいカメラ、いいレンズ、いいフィルムを求めてきたのだった。

 デジタル化は大きな価値観の変革を生んでいて、写真は「記録するもの」から「表現するもの」へと重点が変わりつつある。御苗場での盛り上がりはそのことを示している。ここにも「表現の民主化」「情報発信の民主化」と呼べる現象が見て取れる。

 一方で、誰でも安価に簡単に撮れるということは写真表現を安易にしているというのも事実であり、「写真表現を薄っぺらなものにしている」「本物の写真が理解されにくい」と指摘する人もある。しかし、自らが表現として写真を始めれば、当然、ブレッソンやロバート・フランクやアンセル・アダムスなどの作品に興味を持つ人も増える。結果として、写真に対して目が肥えてくる人は増えるのだ。そうやってまた、日本の写真表現の層は厚くなる。

 

 私は今回、幸運にもレビュアー賞に選ばれ、夢の先プロジェクトに参加させていただいている。私自身、フィルムカメラを使っていたころは写真は高価な遊びであったが、デジタルカメラに出会ったことで、写真を表現として捉えるようになった一人である。

 この幸運に感謝し、日本の写真表現をさらに高めることに貢献できるような作品を作っていきたい。

 

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コメント: 2
  • #1

    tani seks telefon (火曜日, 31 10月 2017 22:56)

    niewzbierany

  • #2

    sekstel (金曜日, 03 11月 2017 22:42)

    niewspominający